遺産分割協議のやり直しは可能?注意点や不満がある場合の対処法など
相続人間で一度成立した遺産分割協議の効果は確定的に生じ、法的安定性が求められるため、やり直すことができないのが原則です。しかし、一定の場合には遺産分割協議やり直しが認められています。
そこで、遺産分割協議のやり直しが認められる場合・その際の注意点について説明いたします。
◆遺産分割協議のやり直しが認められる場合
以下の場合、遺産分割協議のやり直しが認められます。
・相続人全員の合意がある場合
・遺産分割が無効になる場合
・遺産分割を取消すことができる場合
・相続人全員の合意がある場合
相続人全員の合意で終わらせた遺産分割協議は、相続人全員の合意でやり直すことができます。やりなおしの時期についても制限はありません。
・遺産分割が無効になる場合
無効な遺産分割協議は、はじめからなかったものとして扱われるので、遺産分割協議のやりなおしを制限することはありません。そして、以下の場合に遺産分割協議は無効となります。
1 相続人の中に協議に参加していないものがいた場合
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があるため、相続人がかけている場合、協議は無効となります。なお、包括受遺者は相続人として扱われます。
2 意思無能力者が参加していた場合
意思無能力者とは、自己の法律行為の結果を判断するに足る精神能力を持たない人をいいます。意思無能力者の法律行為は絶対的に無効であるため、同人が参加した遺産分割協議は無効となります。
3 利益相反があるにもかかわらず、特別代理人が選任されていなかった場合
相続人が制限行為能力者である場合において、この者の代理人・成年後継人・保佐人・補助人も相続人であることがあります。この場合、制限行為能力者と代理人・成年後継人・保佐人・補助人は相続の利益について相反する関係にあります。利益が相反する場合、特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人を選任する必要があり、これを行わずに遺産分割協議がされた場合、遺産分割は無効となります。
・遺産分割を取消すことができる場合
遺産分割に関する意思表示に、錯誤・詐欺・脅迫があった場合、民法の規定通り取り消すことができます。(民法95条~96条)
「錯誤」とは、遺産分割の重要な部分について勘違いがあることをいいます。
「詐欺」とは、誰かに騙されて、意思表示をすることをいいます。
「脅迫」とは、誰かに暴行や害悪の告知を受け、畏怖して意思表示をすることをいいます。
また、制限行為能力者が、民法所定の制限に従わずに遺産分割協議に参加した場合にも、法律行為を取り消すことができます(民法5条、7条、13条、17条)。
取消された行為は初めから無効なものとして扱われる(民法121条)ため、遺産分割協議のやり直しが認められます。
◆遺産分割協議をやりなおす際の注意点
・税務上の注意点
既に相続税の申告をしている場合、やり直しがあったとしても課税内容は変わりません。
また、合意によって遺産分割がやり直された場合の遺産の移転は、法律的には、贈与・譲渡と評価されます。そのため、贈与税・譲渡所得税が、相続税と併せて課せられることになります。
なお、相続による不動産の移転に不動産諸遠く税はかかりませんが、やり直し後の移転には、登録免許税がかかります。
・不動産の注意点
遺産分割後に第三者に譲渡され、対抗要件である登記を具備された場合、原則として、遺産分割協議のやり直しを行っても第三者に返還を求めることはできません。
・遺産分割協議をやり直せない場合について
調停や審判で遺産分割協議を行って、協議が成立した場合、原則として協議のやり直しは認められません。
村上・加藤・野口法律事務所では、愛知県名古屋市中区を中心に、幅広い地域において相続問題はもちろん、労働問題、債務整理など数々のご相談を承っております。遺産分割問題などの相続問題でお悩みの方は、村上・加藤・野口法律事務所までお気軽にご相談ください。
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