【弁護士が解説】遺産の使い込みが発覚した場合にすべきこととは
家族が亡くなり、遺産を整理している最中に「気づかないうちに誰かが財産を勝手に使っていた」というケースがあります。
遺産の使い込みは、法的に許される行為ではありません。
見過ごしてしまうと本来得られるはずの相続分を損なうだけでなく、今後の相続手続きにも悪影響を及ぼします。
今回は、遺産の使い込みが疑われる・発覚したときの対処法を解説いたします。
遺産の使い込みが発覚した場合の対処法
遺産の使い込みが発覚した場合、以下の流れで対処してください。
- お金の流れを確認する
- 証拠を集める
- 話し合い・調停・訴訟によって返還を要求する
それぞれ確認していきましょう。
お金の流れを確認する
親名義の預貯金や有価証券、不動産収益などに不自然な出金や移動がないかを、通帳・取引履歴・元帳で確かめます。
生前の支出でも、生活費や治療費・介護費に使われた正当な支出は「使い込み」になりません。
死亡後の引出しは、遺産からの支出になるため、本人の同意なく法定相続分を超えて引き出せば原則違法です。
「親が認知症で意思確認ができなかった」「贈与だったと言っている」などの主張がある場合は、贈与契約書の有無や当時の意思能力、支出の使途が本人のためかどうかを証拠で見極めます。
証拠を集める
自力で集められるのは、以下のようなものです。
- 通帳
- ATM明細
- 振込票
- クレジット利用明細
- 領収書
- 介護記録
死亡後は相続人として、金融機関に取引履歴の開示請求ができます。
相手が非協力なら、弁護士に依頼して「弁護士会照会」を使うと、金融機関等から網羅的に資料を取り寄せやすくなります。
話し合い・調停・訴訟によって返還を要求する
最初は返還額と支払方法を特定したうえで協議します。
分割払いなら強制執行認諾文言付公正証書にしておくと、約束が守られなかった場合に強制執行が可能です。
話し合いが決裂したら、死亡後の使い込みについては家庭裁判所の遺産分割調停で取り扱える余地があります。
民法第906条の2により、使い込んだ本人以外の相続人の同意があれば、既に引き出された金額を「存在する遺産」とみなして分け方に織り込めます。
生前の使い込みや同意が得られない場合は、地方裁判所での民事訴訟に移り、「不当利得返還請求」または「不法行為に基づく損害賠償請求」で回収を図ってください。
いずれも請求側に立証責任があるため、前段の証拠固めが重要です。
まとめ
遺産の使い込みが疑われる場合、対応には専門的な知識が求められます。
取引履歴の分析や法的根拠の判断、必要な証拠の選別などは一般の方には難しく、適切な主張を組み立てるためにも専門家の助力が欠かせません。
不安がある場合は、なるべく早めに弁護士に相談してください。
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